こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続ワンポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!
親の親族の債務、相続放棄はいつまで?
20019年8月に、最高裁判所でこれまでの通説を覆す判断がでました。
相続放棄をしないまま死亡した人の相続人が、その債務を相続放棄できる期間に関しての裁判でした。
【相続放棄とは]
相続が発生したとき、3か月以内に相続するのかしないのかを決めなければなりません。
その期間内に「相続放棄」または「限定承認」の意思表示を家庭裁判所にしないと、すべて相続した「単純承認」となります。
期間を過ぎてから、借金が多いから放棄するといっても遅いのです。
その借金は相続人の借金になっているのですから。
【3ヶ月過ぎてから借金が分かった場合】
この期間を悪用して、3か月を経過した後に相続人に対し請求をするような債権者もあります。
この場合、家庭裁判所が借金があることを知らなかったことに相当な理由があると認めると、相続放棄を受理してもらえることがあります。3か月の熟慮期間は、「自分のために相続が発生したことを知った時から始まる」とされたいます。この「知った時」=「借金が相続されたことを知った時」からと解釈するのです。但し、相続財産の調査などをおろそかにしたために借金を知らなかった人までは救済されません。
悪質な債権者の請求に対しては、3か月を過ぎたからと言って諦めず、相続放棄を検討しましょう。
【再転相続】
今回の裁判は、再転相続でした。
原告の伯父が多額の借金を抱え死亡しました。伯父の子は相続放棄をしたため、原告の父が相続しました。伯父の家族と原告の家族は疎遠だったため、父は自分が相続人になったことを知りませんでした。そのため相続放棄をしないままに、死亡してしまいました。
原告は、父が死亡した時点で伯父の借金も相続したことになります。しかし、父が伯父の相続人になったことも、借金を相続したことも知りませんでした。
そして、父の死から3年後に、債権者が原告の財産に強制執行を通知してきました。
原告は、「通知の日から3か月以内の相続放棄をし、強制執行しないよう」」に裁判した。
前述の解釈に沿えば、当然に原告の主張が認められると考えられますが、「親族の債務に関する子供の認識に関わらず、親の死亡を知った時点を熟慮期間の起算点」とする法解釈が通説でした。
それに従えば、原告が父の死亡を知ってから3か月を経過した時点で相続放棄はできないことになります。
しかし、今回の最高裁判所判断は、「再転相続で相続人になったことを知らないまま熟慮期間が始まるとすると、相続を認めるか放棄するかを選ぶ機会を保障する民法の規定の趣旨に反する」として原告の相続放棄を向とめました。
今回の判決により、身に覚えのない親族の借金の相続を放棄できる可能性が広がりました。
しかし、相続発生時にちゃんと財産や債務の調査をしていない場合には、相続放棄を認められない場合もあります。財産の調査に時間がかかるような場合には、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を請求することができます。できる限りの調査をしっかりとやりましょう。