おひとり様の心配事
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続ワンポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!
おひとり様の心配
生涯未婚率は年々上昇しており、2019年には男性23.4%となっています。いわゆる「おひとり様」です。
現役時代は、子に係る費用が無く豊かに生活でき、浪費しなければそこそこの蓄えもできます。老後は、環境の良い施設に入居して穏やかに生活することもできました。
心配は、死亡後の事。
遺産相続も重要ですが、もっと切実な心配事があるようです。
おひとり様には、直系卑属(子)がいません。
子がいれば当然にやってもらえるであろうことがどうなるのか心配です。
【相談例】
≪相談内容≫
イチローさん(82歳)は、長崎県佐世保市の高校を出た後東京で就職し定年まで勤めあげました。
定年後に、佐世保でマンションを購入し一人暮らしをしています。老後の事を考えて、親戚のいる故郷に戻ってきました。
しかし、東京にいた期間が長かったため、親戚づきあいは希薄でした。
自分が死んだとき、法定相続人は兄弟や甥,姪になるが、どうすれいいでしょうか。
果たして、法事なんかはやってもらえるのでしょうか。
子がいないからといって、何もしてもらえないのは悲しい。
きちんとやってもらえるように、財産を使いたい。
【遺言による対策案】
子がなく、親もすでに亡くなっている場合、法定相続人は兄弟になります。
兄弟が死亡している場合にはその子(甥、姪)が代襲相続人となります。
兄弟には、遺留分がありませんので、遺言でをすることでその通りの遺産分割が達成できます。
その遺言で、多めに財産を取得する者に法事やお墓の管理処分を負担として負わせることが可能です。
今後掛かる費用を余分に渡し、その代わりにお願いするということです。
遺言では、このような負担付き条項は認められていますが、実際に負担を実行してもらえるかどうかは、財産を取得した相続人に掛かっています。
遺言によって取得した財産は、完全にその相続人の固有財産なのです。
個人の財産は、その本人が自由に使うことができます。法事以外には使えないというような縛りはつけられません。
負担を履行しない場合、他の相続人が裁判所を介して履行を請求することは可能ですが、なかなかできることではありません。
結局、負担付き遺言では、確実な履行は約束されないのです。
【家族信託で確実に】
家族信託で確実に履行してもらえるように対策できます。
まずは、自分がやってもらいたい法要などに必要な費用を見積もり、それに少し上乗せした金額を信託します。甥、姪のなかから信頼できる者を受託者、受益者として信託契約を結びます。又は、遺言信託をします。
信託金銭は受託者が管理し法事等を主催しますが、受益者の監督や請求により委託者の希望通りの履行が担保されます。
おひとり様の注意点としては、受託者に行事ごとに報酬を設定する、信託終了時の残余財産を受託者や受益者に取得させる、難しい事務に関しては第三者への委任を許容する、など負担の軽減と苦労に報いる対策をしておくことが大切です。
イチローさんは、認知症の心配もあるので、今後の施設利用などと死亡後の事務管理に係る信託を締結し、残る財産は法定相続分で相続してもらうように遺言を作成しました。