配偶者居住権っていくら?
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続ワンポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
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では、ワンポイントをどうぞ!
配偶者居住権っていくら?
改正相続法の大きな目玉の一つが、配偶者居住権です。
以前の相続では、配偶者が自宅を相続した場合、法定相続分で考えた場合には、金銭等の財産を取得できなくなることがありました。
住む場所はあっても、老後の資金がなくなり生活が苦しくなることがあったのです。
配偶者居住権は、配偶者が死亡するまでの住む権利です。所有権ではありません。所有権より評価額が小さくなるので、金銭等の財産が取得しやすくなります。
簡単にいうと、自宅の所有権を
⑴配偶者居住権
⑵配偶者が死亡するまで住まわせる義務のついた所有権(以下「所有権」とします。)
の二つの権利に分けるということです。
配偶者居住権の評価額+所有権の評価額=自宅の評価額
ここで言う所有権は、配偶者が死亡するまでは使えない所有権です。
配偶者の居住終了後に取得する自宅の評価額を、現在価値に置き換えた価格となります。
【現在価格に置き換える】
例えば、100万円を年利3%で増やしていくと、10年後には134万円になります。
年利3%で考えた場合、10年後の134万円は現在価値にすると100万円ということです。
民法では、これまで法定金利を5%としていました。
しかし、実情とあまりにも差が大きいので、2020年4月民法改正により3%としました。さらに、固定されていた法定金利を、定期的に見直すこととなりました。
配偶者居住権の計算では、この法定金利を使って計算します。
法定金利の改正に配偶者居住権施行を合わせた側面もあるようです。
【建物は耐用年数がある】
家は、新築してから徐々に劣化していきます。それに合わせて、評価額は下がります。減価償却という考え方をする場合、木造建物は耐用年数22年で計算することになっています。
しかし、実際はそれ以上使っていますよね。
ということで、配偶者居住権を計算する場合は1.5倍の33年で評価0になるとして計算します。
【土地の評価額は変動しないことにする】
建物と違い土地は通常劣化しません。
土地の場合は、経済状況などにより変動します。上がることもあり下がることもあります。
配偶者居住権が終わるときの土地価格は、誰にも分りません。
ということで、土地の価格は変動しないものとして計算します。
【配偶者居住の期間】
配偶者居住権の期間は、原則配偶者が死亡する迄です。
しかし、配偶者居住権を設定する時点では、死亡する時期は不明です。
その為、期間については平均余命という数字を使います。厚生労働省が「簡易生命表」というものを作成し公表しています。2017年の簡易生命表で70歳女性は20.03年となっています。配偶者が70歳の場合には、居住期間を20年で計算することになります。
【計算式】
上記を計算式にするとこのようになります。
⑴建物の配偶者居住権=
建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-居住年数)/残存耐用年数
×存続年数に応じた民法の法定利率による複利原価率
⑵土地の配偶者居住権
土地等の時価-土地等の時価×居住年数に応じた民法の法定利息による複利原価率
計算例)建物時価額2000万円 土地時価額2000万円
建物残存耐用年数15年 平均余命(居住年数)10年
年利3%期間10年の複利原価率=0.744
建物配偶者居住権価格=2000-2000×(15-10)/15×0.744=1504万円
土地配偶者居住権価格=2000-2000×0.744=512万円
配偶者居住権合計=1504万円+512万円=2016万円
相続時の評価額から配偶者居住権の評価額を引いた残りが所有権評価額となります。
所有権価格=4000万円-2016万円=1984万円
この例では、配偶者居住権と所有権が約半々になりました。