人の気持ちは変わるもの
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続ワンポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!
人の気持ちは変わるもの
90歳の父親と同居して介護しているAさん。
兄弟は、離れて暮らしているため、相続の権利は放棄するということで合意していました。
しかし、今になって長男が相続を要求してきました。すでに、父親の認知症は進んでおり、遺言はできない状態です。
【遺言があれば】
父親が元気なときは、長男も相続しないと言っていましたので、遺言をしておくべきでした。
「全財産をAに相続させる。」の一文で良かったのです。
これがあれば、長男の同意なく遺産をAさんが取得することができました。
最悪、長男が遺留分減殺額請求をした場合には、法定相続分の2分の1をお金で支払えば決着となります。生命保険の受取人をAさんにしておけば、遺留分支払いに困ることもありません。
【遺言できない】
認知症でも、初期のうちは遺言できます。
又、認知症で事理弁識能力を欠く常況にあっても、一時的に回復したときに医師の立ち合いがあれば遺言できますが、実際には極めて困難です。
Aさんの父親の場合には、遺言はもう不可能です。
遺産は、第一に被相続人の意志により分割されます。(=遺言)
被相続人の意志が確認できない場合には、相続人全員の協議により分割されます。
相続人の協議が調わない場合には、家庭裁判所による調停や審判で分割方法を決めることになります。
Aさんはお父さんが亡くなったあと、長男や他の兄弟と遺産分割協議をして分割方法を決めなくてはなりません。そして、協議で合意できない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。
【法定相続分】
遺言や相続人による分割協議において、法定相続分と違う分割方法を決めても法的に有効です。
但し、債務(借金等)については、法定相続分で相続されます。
家庭裁判所で遺産分割事件として扱う場合には、法定相続分を基準として分割が決定されます。
【分割協議】
上記のように、遺産分割協議書に実印を押すとそれにより財産が分割されます。内容に不満があったとしても、実印を押したら完了です。
相続財産は、相続発生時に被相続人の所有していた財産をいいます。
しかし、その前に財産をもらっていたり、逆に被相続人の財産の増加に寄与したりする相続人がいる場合には、これを考慮することとされています。
特別受益:生前贈与等
寄与分 :事業に対する労務の提供、財産上の給付、療養看護等
Aさんの場合は、寄与分が認められる可能性はありますので、これまで及び今後の介護に対し、どれくらいの評価になるか証明となるようなデータを取っておいた方がいいでしょう。
遺産分割協議では長男に認めてもらえなくても、家庭裁判所では認めてもらえる可能性があります。
親が元気なうちは兄弟の関係に問題なくても、相続の場面では揉めてしまうのは普通です。
親の責任として、元気なうちに財産の分割方法を明確にして、兄弟がいつまでも仲良くできるように環境を整えてあげましょう。