相続で報われたい、親の介護。
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
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弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!
親の介護、評価額はいくら?
高齢となった親や配偶者の親の介護をするのは大変な苦労です。
その苦労を寄与分として評価し、遺産分割協議の際に介護をした相続人の取得する財産を多くすることができます。これを寄与分と言います。
相続法の改正により、これまで認められてこなかった相続人以外の親族(息子の嫁など)の特別な寄与に関しても認められることになり、相続人に対して請求できることとなりました。
しかし、寄与分は評価が難しく、介護した者が満足できる金額にはなかなかならないようです。
【寄与分】
相続人の公平を図るための制度に、特別受益と寄与分というものがあります。
特別受益は、生前の贈与等の特別な受益です。例えば、相続人の一人だけ家を建てるときに1000万円援助してもらったなど、金額として評価しやすいものです。
寄与分は、財産の増加や維持に特別の寄与があった場合に認められます。民間の介護サービスを頼めば費用が掛かるところ、家族が介護することで業者への支払いが不要になりますので、財産の維持に寄与したものとされます。
例)相続財産 1000万円 相続人 子A 子B
Aの特別受益300万円
Bの寄与分 200万円
法定相続(1/2ずつ)で分割する場合
Aの取得する財産=(1000万円∔300万円-200万円)×1/2-300万円=250万円
Bの取得する財産=(1000万円+300万円-200万円)×1/2+200万円=750万円
寄与分の評価額が確定すれば、計算は非常に簡単なのですが・・・・
寄与分は、話し合いで決めます。寄与分を多くすると、他の相続人はもらえる相続財産が減るわけですから、なかなか決められません。
民間の介護サービスの費用は、評価の参考基準にはなりますが、まるまる認められるわけではありません。相続財産が、業者の費用に満たない場合もあります。そもそも、寄与分は特別な寄与に認められます。家族だったら当たり前というような親の面倒は寄与分とは評価されません。
被相続人との身分関係に基づいて、通常期待される程度を超える貢献である部分が寄与分とされます。
このような基準で、相続人の評価が揃うのは難しいのは明白です。
法務省が公表している「裁判による寄与分に関する裁判例」を見ても、それぞれの状況に応じた個別の算定がされています。http://www.moj.go.jp/content/001222143.pdf
【特別寄与制度】
昨年の改正相続法施行により、相続人以外の親族による被相続人の療養看護についての寄与が認められることになりました。
相続人の寄与分と違い、
・療養看護に対する寄与のみ
・請求期間:相続を知ってから6か月、相続開始から1年
・遺産分割の対象ではなく、特別寄与者が法定相続人に法定相続分で請求する
となっていますが、評価額に関しては寄与分と同じく協議で決めることになっています。
新しい制度で、まだ判例などはありませんが、寄与分同様に一切の事情を考慮して決められることになるでしょう。
【寄与分による争族を予防】
寄与分によるトラブルは、評価額の合意が難しいところになります。
遺言により、寄与分を考慮した財産の配分をしておくのが効果的です。付言として、療養看護でかけた苦労を反映させた旨を記載すれば、財産の取得が少ない相続人からも不満がでないのではないでしょうか。
生命保険の死亡保険金の受け取りを寄与者にすることも効果的です。保険金は、相続財産ではなく受取人の固有の財産となり、遺産分割協議の対象ではありません。確実に寄与者が取得できます。
以上の2案は、被相続人の意志能力が必要条件になります。
すでに認知症が進んでいるとできません。
その場合は、寄与者が他の相続人に寄与分や特別寄与料を主張しやすいように、介護日誌を付けたり、かかった費用を証明できる帳票を準備しておくのが良いでしょう。相続の前から、相続人全員で親の状況を共有し、寄与者がどれだけの負担をしているのか分かっていれば、協議での評価額算定で合意が形成しやすくなります。