障がいを持つ子の親なきあと
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!⇩
障がいを持つ子の親なきあと
今年に入ってから障がい者の御兄弟がいる方からの相続相談が2件ありました。増えてきているような気がします。
実際、障がい者手帳を所持する方の数は、平成18年(744万人)から28年(936万人)までの10年間で約25%も増加しています。知的障がいと精神障がいに限っても平成28年に約500万人となっており、認知症患者の数とあまり差がありません。
障がいにより、意思能力が無い場合にも当然認知症と同じように法律行為はできなくなります。さらに、高齢者に多い認知症よりも、長期間法律行為のできない期間が長く続くことが予想されますので、対策をしっかりと考える必要があります。
【成年後見制度利用】
意思能力が無く、法律行為ができない人の生活を守るための制度が成年後見制度です。認知症患者の財産管理に利用される割合が多いのですが、全体の割程度は精神障がいや知的障がいの方が利用されています。
認知症の場合は、後見制度は被後見人の死亡まで継続しますので、高齢者に多い認知症より長く継続することになります。その分、専門職後見人が選定された場合の家族の負担は重くなります。
【親の相続】
親が亡くなったとき、子は等しく相続分があります。そして、遺留分が法定相続分の1/2あります。
妻や、健常者の子に財産を多く相続させ、障害を持つ子の面倒を看てもらおうと遺言をすることが考えられます。しかし、遺言によっても遺留分を侵すことはできません。将来、専門職後見人が選任すると、本人に代わって遺留分侵害額請求権を行使される可能性が残ります。そして、後見人により本人のものとなった金銭は、家庭裁判所の管理のもと、後見人により使われることになります。
では、遺言をしないとどうなるのでしょうか?
意思能力のない者の法律行為は無効となります。
法律行為である遺産分割協議ができません。
相続財産は、凍結されてしまいます。(銀行口座の預金に関しては、一定額までの仮払いは可能です)
遺産分割協議を有効にするためには、成年後見人を法定代理人として参加させることが必要になります。後見人は、被後見人の法定相続分以上の財産を取得する義務があります。
法定相続分の遺産は、家庭裁判所の管理のもと後見人が処分することになります。
【他人に財産管理をして欲しくない】
障がいを持つ子の将来、自分がいなくなった後、家族で経済的な面倒を継続したいと考える方は多いです。子供の事を知らない裁判所に管理されたのでは、子どもの幸せを願う血の通った使い方にはならない。任意後見を設定すれば家族が後見人になれますが、家庭裁判所の管理は発生しますし、未成年でない場合は本人に意思能力が無いと任意後見の契約ができません。
しかし、前述のように遺言では、安心できる対策はできなさそうです。
後見制度では、家族の負担が大きく希望する使い方ができそうもありません。
【民事信託(家族信託)】
親なきあとの対策としては、信託が一番適しているのではないでしょうか。
信託の場合、委託者と受託者の契約で有効となります。財産の給付を受ける受益者の意思能力は関係ありません。
障がいを持つ子を受益者として、兄弟や仲の良い親族などを受託者として、親の財産を託すことが法律上有効になるのです。受益権は財産権ですので、親の相続が発生したとき、遺留分以上の受益権があれば遺留分侵害額請求でトラブルになることもありません。
受益者をよく知る親族が、親が希望した目的に沿った財産管理処分をすることができます。
民亊信託を考えるのであれば、親の認知症対策にもななります。