相続登記の義務化
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
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では、ワンポイントをどうぞ!⇩
相続登記の義務化
空き家や所有者不明土地の増加が、大きな社会問題となって久しいです。これまで行政は、相続発生により登記簿の名義人がいなくなっても、そのままの登記を黙認していました。
登記をするには、面倒な手続きがあり、費用も掛かるとあって相続登記がされない場合が多かったのです。
しかし、東日本大震災の復興の支障になるなど、社会問題として注目されるようになったこともあり、国は相続登記の義務化を決めました。
今後の相続に大きな影響がありそうです。
冒頭で書いたように、相続登記をしない理由は、面倒で費用が掛かり、しなくても罰則がないからです。
改正案では、手続きの簡略化と費用の削減、罰則による牽制がセットになっています。どのようなアメとムチなのでしょうか。
【 ム チ 】
①登記義務
不動産を相続した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務となります。
また、法定相続分で登記をし、その後に遺産分割をした場合には、法定相続分を超える所有権を取得した相続人が、遺産分割から3年以内に登記をすることが義務となります。
②罰則
正当な理由なく相続登記の申請をしなかった場合は、10万円以下の過料に処せられます。
これまでは、なんの罰則もなかったのですから、一定の効果が期待できるようには思います。
しかし、何代にも渡って相続登記が放置されている不動産などは、専門家でも所有者を特定できないこともあります。
正当な理由で登記をできない不動産は、相当残るように思われます。
【 ア メ 】
③相続人申告登記
相続登記の義務がある相続人が、3年以内に不動産の相続人であることを申し出て、登記官に職権で登記記録に付記してもらうことができるようになり、これで一応の登記義務を果たしたことになります。
ただし、これは相続登記ではありませんので、遺産分割によって不動産を取得した者は、遺産分割から3年以内に相続登記をしなければなりません。
④法定相続分での相続登記後の登記の簡略化
いったん法定相続分で共有する相続登記をした後に、遺産分割協議で不動産の所有権を取得した場合や、遺贈により不動産を取得した場合、持ち分や所有権の譲渡人と譲受人の共同申請による移転登記が必要でした。今回の改正では、一定の条件に当てはまれば登記権利者の単独登記が可能とされました。
・遺産分割協議、審判、調停による所有権の取得に関する登記
・他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記
・特定財産承継遺言(相続させる遺言)による所有権の取得に関する登記
・相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記
⑤所有不動産記録証明書(仮)
不動産の名義人、その他の相続人は、有料で所有する不動産の一覧「所有不動産記録証明書」を交付してもらうことができるようになります。
【その他】
①氏名、住所変更登記の義務化
相続登記だけでなく、所有者の名称や住所移転の変更登記も義務化されます。
変更から2年以内に正当な理由なく登記を行わない場合には、5万円以下の過料に処せられることになります。
②所有権放棄
土地を手放したくても引き取り手がなく所有者不明となってしまうこともありました。
今回の改正の目玉と言えるポイントですが、一定の条件により土地を国に引き取ってもらうことができるようになります。
・土地の上に建物がない
・土地に担保権、使用収益を目的とする権利の設定がない
・土壌汚染がない
・境界に争いがない
・土地の通常の管理処分を阻害する工作物や車両、樹木などが土地上にない
・土地の通常の管理処分をするために除去しなければならない物が土地の下に存在しない。
・通常の管理処分をするのに過分の費用、労力を要する土地ではない。
所有権放棄の申請には、10年間の管理に必要な費用を納める必要があります。
改正法は、2024年を目途に施行される予定であり、細かな部分はこれから決められることになります。
相続発生したときに困らないよう、今一度不動産の登記内容を確認しておきましょう。