遺産分割協議がまとまらない。納税はどうする?
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
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では、ワンポイントをどうぞ!⇩
遺産分割協議がまとまらない
相続が発生し遺言が無い場合には、法定相続人全員による遺産分割協議によって分割方法を決めなければなりません。この協議には、期限はありませんので、時間がかかっても協議がまとまれば遺産の分割ができることになります。
ただし、相続税が発生する場合には少し状況が変わります。相続税は、取得した遺産の額によって各人の納税額が決まりますが、相続から10か月という期限があります。原則として、相続発生から10か月以内に遺産分割協議を成立させ、取得した遺産に応じた相続税を支払うことが必要なのです。
遺産が多く複雑、法定相続人が多く話がまとまらない等、たった10か月では遺産分割協議が終わらないこともおおいのが実情です。そのような場合には、手続きはどうなるのでしょうか。
【納税期限は10か月】
相続税の申告と納税の期限は、相続開始があったことを知った日から10か月以内と定められています。通常は、被相続人が亡くなった日から10か月以内です。この期限を延長することは原則不可です。期限を過ぎれば、ペナルティーとして、延滞税や加算税を課されることになります。
ただし、「災害その他やむを得ない理由により、期限までに申告等の行為が物理的に行えない場合」には、申告や納付などの期限は延長できるとされています。令和3年時点では、「コロナ」により申請ができないなどの理由により、延長することが可能になっています。
災害その他のやむを得ない理由がない場合には、期限の延長はできませんので、相続から10か月以内に申告と納税をしなければなりません。
【10か月で協議がまとまらない】
10か月で遺産分割協議がまとまらないことは多いです。不動産が多かったり、投資などをしていた場合には、財産調査だけでも数か月はかかります。だからと言って税務署は待ってくれません。分割協議を待っていては、いつ納税してもらえるかわからなくなってしまいます。
とりあえず、法定相続人が法定相続分で遺産を取得したものとして、10か月以内に相続税を計算し納税をすることになります。そして、後日「修正申告(相続税追加)」や「更正の請求(相続税減額)」をします。更生の請求は申告期限から原則5年以内にしなければなりません。
【特例の適用】
上記のように未分割で申告した場合
「配偶者に対する相続税額の軽減規定」
「小規模宅地等の特例」
が適用されません。
ただし、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込み書」を提出しておくと、3年以内の更正を認めてもらえます。
【その他】
分割の確定のほか、申告後に
・認知、相続廃除その他で相続人に変更があった
・遺留分侵害額請求が成立した
・遺言書が発見された
場合についても、申告期限と関係なく、これらの事情を知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることができます。
このように、相続税は特別な事情がない限り、相続開始から10か月以内に申告から納税までしなければなりません。相続後の10か月は、あっという間に過ぎてしまいます。遺言が無い場合には、早めに専門家に依頼をするのが得策ではないでしょうか。