こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!⇩
所有者不明土地の活用を考える
相続が発生したとき、遺産は相続人が取得します。遺言又は遺産分割協議により取得した人のものになります。
当然、土地も同様になくなった人名義の土地は、相続人により取得され、所有者が変わります。故人は所有者の権利を持つことができません。
相続で所有者は変わりますが、その相続登記はこれまで義務ではありませんでした。相続登記には面倒な手続きがあり、登録免許税や司法書士の報酬など費用も掛かります。その結果、相続登記がされず、長年の間に所有者がだれか分からない状況になり、所有者不明土地となっているのです。
【所有者不明土地の活用は困難】
所有者不明土地は、すでに九州本土の面積を超え北海道の面積に近づいています。
遊休土地を活用する場合、まずは所有者から買い取るか借りるための契約が必要になります。誰も使っていないからと言って、勝手に使うことは日本では違法行為となります。土地には所有者がおり、所有者に管理処分権限のすべてがありますので、所有者の法律行為が必要になるのです。
その際、登記上の所有者が既に亡くなっている場合には、その相続人が法定相続分で共有しているものとみなされます。つまり、法定相続人全員の意思により管理処分されるのです。
法定相続人全員の意思=法定相続人全員の印鑑が必要
【法定相続人】
法定相続人は、配偶者と子になる場合が多いです。
相続登記をする前に、子が死亡すればさらにその相続人(孫)が相続人です。
相続登記をほっておくと、共有者(=相続人)は、どんどん増えてしまいます。80年前に亡くなった曾祖父名義のままの土地があった場合、共有者が50人以上ということもあり得ます。共有者であるひ孫は、自分が共有者であることも知りませんし、その土地を使っている人も、どれだけの共有者がいるのか分かりません。
所有者全員のハンコを集めることができないので、この土地は処分が不可能な所有者不明土地ということです。
【不動産登記法改正】
所有者不明土地を対策するため、不動産登記法が改正されました。施行は令和6年4月です。
改正法では、相続登記は義務とされます。義務を果たさない場合には、10万円以下の過料が課されます。
そしてこの改正法は、施行以前の相続にも適用されます。今現在、亡くなった人の名義のままの登記は、施行から3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料とされるのです。
これから先の相続なら、その登記名義人の相続であり割と簡単ですが、過去の分となると困難な状況が考えられます。100年以上前、明治時代に登記されたままの登記簿は山ほどあるのです。名義人の相続時のことを知る人も存在せず、共有者とはいえ全く面識のない相続人が多数いるはずです。これを、戸籍をたどりながら確定しなければなりません。そして、共有者である旨を通知して、相続登記に協力してもらえるようにお願いするのです。
万が一、共有者が認知症で意思表示できない場合には、後見人を付けてもらわなければ書類が作れません。
【何から手を付けるか】
まずは、実家や親が管理している土地の登記を確認してください。所有者欄が故人の場合には、相続登記を着手しましょう。相続登記はやるなら早いに越したことはありません。
自分でできそうにない場合は、専門家に依頼しましょう。相続を専門としている行政書士か司法書士が窓口となります。改正法施行から3年経過すると、過料が課される可能性がありますので、そうなってからでは専門家もすぐに対応するのが難しくなるかもしれません。