こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族の信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!⇩
争族は相続される
遺産相続のトラブルは、お金の問題ではないことが良くあります。
仲の悪い相続人間で、相手が困るようにするためにハンコを押さない。
自分の方に少々の不利益があっても構わない。
というような状況です。
しかし、相続手続きは後になればなるほど困難になります。自分が意地を張って相続手続きができなくなったせいで、将来、自分の子や孫に大きな負担を残すことになるかもしれません。
【兄弟の諍いが子に相続された例】
Aさんのお父さんは15年前に亡くなりました。
実家には同居していた兄夫婦が住んでいました。
実家は父名義でしたので、15年前に遺産分割協議書にハンコを押してほしいと兄から言われましたが、過去に金銭トラブルがあり縁を切っていたので、断りました。
それから13年、その兄が亡くなりました。
実家に住む兄嫁は、相続登記義務化が始まるということを聞き、子供に迷惑掛けたくないと思い、15年ぶりにAさんに遺産分割協議書の押印をお願いしました。
しかし、Aさんはまだ兄を憎んでおり、兄嫁にも協力したくありません。
「俺に相続登記の過料10万円が来ても構わん。ハンコは押さん!」と突っぱねてしまいました。
【遺産分割は相続人全員で合意しないとできない】
相続財産は、遺言があれば遺言者の決めた人が財産を取得することができます。
遺言が無い場合は、法定相続人の話し合いで分け方を決めなければなりません。
相続人の一人が遺産分割協議書にハンコを押さなければ、遺産分割はできません。
遺産分割する前の相続財産は、法定相続人による共有状態となります。
共有の財産は、全員の合意が無ければ処分することはできません。
Aさんのお父さんの相続財産は、実家の不動産だけです。現在築52年。
土地は借地ですので、売ってお金に換えることはほぼ不可能です。
【空き家になる】
兄嫁も76歳と高齢で、この実家に1人暮らしです。
子供は、県外に家を持っていますので、この家に戻ることはありません。
兄嫁が施設に入ったり死亡すると、この家は空き家になります。
空き家となっても、処分ができません。
老朽化して、危険な状態になったとき、行政は行政代執行で解体することができます。そして、これに係った費用は所有者に請求されます。
このときの所有者は誰でしょうか?
法定相続人です。
そのときに生存する法定相続人です。
空き家が危険な特定空き家になるまで20年ほどかかることが多いですから、そのころにはAさんも兄嫁も亡くなっている可能性が高いと思います。
長年放置された空き家が危険な状態になって、行政代執行で解体撤去されるときの所有者は、Aさんや兄嫁の子や孫となるでしょう。解体撤去費用の数百万円を法定相続分で請求され、払わなければなりません。
【遺産分割は後に残さない】
この例では、15年前であればAさんと兄の2人がハンコを押せば遺産分割できました。
現時点では、Aさんと兄の相続人の兄嫁・兄の子2人の4人でハンコを押せば遺産分割ができます。
しかし、Aさんが拒否しましたので、次のタイミングとしてはAさんの相続後となります。
Aさんの相続人である配偶者及び子が、協力すれば遺産分割できることになります。
しかし、子供たちは県外に住んでいますし、15年もの間付き合いが無く、お互いの子たちはほぼ面識もない状態になっています。
今から、数十年後の状況は分かりませんが、連絡を取るだけでも難しいのは容易に想像できます。
Aさんは、亡くなった兄に対する負の気持ちを、自分や兄の子や孫に相続させてしまう道を選んだようです。もう少し冷静に考えてほしいと感じた事案でした。