子供がいない人の相続
現在では、価値観も多様化しており、結婚をしないとか子は要らないという考え方も、一般的に受け入れられるようになっています。
しかし、一昔前までは、ある年齢になったら結婚し子供を持つというのが当たり前という時代がありました。
その時代に、結婚せず子供もいないということで、肩身の狭い思いを強いられてきた方の中には、兄弟と疎遠になっている方もあります。
そのような方が無くなると、相続手続きがうまくできないということが良くあります。
【遺言が無い場合】
子供がいない人の相続で問題になるのは、遺言がない場合です。
遺言があれば、その通りに分割手続きをするだけです。
手続きの流れは以下のようになります。
1.法定相続人の確定
2.遺産の調査
3.遺産分割協議書作成
4.分割手続き(銀行口座解約・相続登記等)
子供がいない人の場合、いる人と比べて1.法定相続人の確定作業から難しくなります。
戸籍を集めて法定相続人を確認するのですが、子供がいる場合には被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得します。それにより、法定相続人となる子と配偶者を確定できます。
子がいない場合、親も死亡しているとすると配偶者と兄弟姉妹が法定相続人です。兄弟姉妹を確定するためには、被相続人とその両親の出生から死亡までの戸籍を取得しなければなりません。これにより、本人に子が無く、兄弟姉妹が誰であるかを確定できることになります。
さらに、兄弟姉妹で無くなっている者がいると、その子が法定相続人になりますので、亡くなっている兄弟姉妹についても出生から亡くなるまでの戸籍を取得しなければなりません。
昭和の初めのころは、10人兄弟なんて言うことも珍しくありませんでした。
10人兄弟の末っ子が子が無くなくなり、その時点で兄・姉も7人亡くなっていると、出生から死亡までの戸籍を取得する人数が10人以上になります。戸籍を集めるだけでも、半年以上かかるかもしれません。
そして、相続人を確定しても、その中に認知症で意思能力が無い人がいると3.遺産分割協議書が作成できません。その方に成年後見人を付け、法定代理人として遺産分割協議に参加してもらえば作成できますが・・・・
想像してみてください。上記の様な状況となれば、法定相続人がみんな顔見知りということは無いでしょう。全くあったこともないような遠い親戚が、協力して手続きをしないといけないのです。法定相続人全員に相続の協力を依頼するだけでも大変な作業になります。法定相続人の一人が協力を拒否すればできませんし、連絡が取れない人がいてもダメです。
遺産は、相続手続きにより分割されますので、手続きができないといつまでも分割できず法定相続人による共有のままとなります。銀行預金は一定期間経過後国庫帰属となり、不動産は所有者不明土地や所有者不明の空き家となって、地域の迷惑となるのです。
【遺言があれば】
老後に世話になった兄弟に、遺言で「私のすべての財産を〇○○に相続させる」とすれば、確実に相続手続きを進めることができます。遺言も、公正証書にすれば大量の戸籍を収集する作業も不要となります。