遺産分割協議がまとまらないけど相続登記の罰則は逃れたい。
令和6年4月から、3年以内の相続登記が義務となりました。
その義務を果たさない場合、10万円の過料を科される可能性があります。
遺言が無い場合、相続登記は遺産分割協議により、取得する相続人を決めなければできません。価値の高い不動産であればみんな欲しいし、ぼろい空き家など価値のない管理できない不動産は誰も欲しくありません。そのため、遺産分割協議がまとまらないということはよくあります。相続登記をしたくてもできない状況が発生します。
そんな時に、相続登記はできないけど一応義務は果たしたことにできるというのが「相続人申告登記」です。
【遺産分割協議】
亡くなった被相続人が、遺言を残していればそれにかかれている人が遺産を取得することになります。
遺言が無い場合には、法律で決められた相続人が話し合いで遺産を誰が取得するかを決めます。
相続人それぞれの事情や配偶者の影響により、また、財産が分け難いものであるなど様々な理由で、遺産分割協議が上手くまとまらないことはよくあります。お金だけは何とか分けても、不動産はどうにも決められないということもあります。
相続登記には、法定相続人全員の署名と押印(実印)がある遺産分割協議書が、必要です。これができない限り、相続登記はできません。
【相続登記の義務違反】
相続登記は相続発生から3年以内が義務です。
しかし、遺産分割には期限はありません。4年後でも10年後でも、遺産分割は適法なのです。
遺言に、不動産の分割を5年間禁止する規定があれば、5年間は分割できません。(法定相続人に未成年の者がいる場合など、成人してから分割するためにこのような条項をつけることもあります。)
相続登記は3年以内義務だけど、その前提となる遺産分割は期限の制限はないのです。
でも、相続登記は3年以内にしなければ罰則がある。
なんだか、アンバランスですね。
【相続人申告登記】
相続人であることをだけは認めて法務局に届けるので、罰則は無しにしてというのがこの制度です。
相続人申告登記では、簡単に義務を果たすことができますが、以下のデメリットもありますので注意が必要です。
●相続登記の申請義務が履行されたことにはならない。
●不動産の権利関係の公示をするものではないので、不動産の売買や抵当権の設定などはできない。
相続登記をしなければならないという状況は変わらないのです。
相 続 人 申 告 登 記 申 出 書 記 載 例(法務省 HPより)
【相続人申告登記の手続き】
相続人申告登記は登記という名前ですが、単に自分が相続人の一人であることを法務局に申告し、職権で記載してもらうだけのものですので、申告書類は割と簡単です。
上に、記載例を掲載しましたが、1枚目に申告者と不動産の情報を記載して、2枚目に申告者と被相続人の続柄の説明図を付けるだけです。2枚目の相続関係図については、その関係を証明するだけの戸籍等を添付する必要があります。記載例は、被相続人父で子の一人が申出人のものですが、簡単にできることがわかると思います。
戸籍等を集めるにあたって 、直系血族のものは簡単に取得できますが、直系でない兄弟等のものが必要になると、取得困難となる場合があります。その場合は、その兄弟等の直系親族にお願いするか、職務上請求書を使うことができる行政書士等の専門家に「法定相続情報一覧図」作成業務として依頼するといいでしょう。法定相続情報一覧図を作成しておけば、遺産分割協議ができた後の正式な相続登記のときにも添付書類として使うことができます。
申告書の作成作業は比較的簡単なので、一般の方でも作れるのではないかと思いますが、自分で作成したくない人は司法書士に依頼することもできます。