相続不動産を取り巻く急激な変化
人口減少が加速しています。
近年では、年間80万人を大きく超える減少となっています。
世帯人員の減少も加速しており、世帯数の減少は2030年あたりから始まると予想されています。
これにより、空き家は増えます。さらには、個人で管理できない土地も増えることも想定されます。
【空き家対策】
以前は、ぼろぼろの空き家でもつぶさない方が節税になりました。
固定資産税は評価額の1.4%が基本です。
宅地の評価額が1000万円であれば、14万円/年となります。しかし、建物が建っていれば200㎡までは6分の1に減額されています。(14万円➢2万3300円)
このため、建物がぼろぼろになっても解体しない場合が多くなり、処分が遅れることで相続手続きが困難になり、いわゆる所有者不明となっていった空き家が多数存在します。相続手続きは、長引かせていいことは何もありません。
<空き家対策特措法>
この状況を打開するために、2015年に空き家特措法が施行されました。
行政が、危険な状態である空き家を「特定空き家」と認定すると、固定資産税の減額が無くなり管理や撤去の勧告がされます。それでも改善されず、危険な場合には市町村により強制撤去(行政代執行)ができるというものです。
しかし、個人の財産を強制的に処分することは行政側の負担も大きく、期待されたほどの効果は出せていません。施行から9年たちますが、行政代執行が0件の市町村が多い現状です。
<改正空き家対策特措法>
2023年12月に改正法が施行されました。
特定空き家(=危険な空き家)の手前に、管理不全空き家(=近所迷惑な空き家)を設定し、管理不全空き家となった時点で、固定資産税の減額を無くすことになります。管理不全空き家の要件は、市町村ごとに設定することになっていますので、今(2024年9月)現在は、それぞれの自治体で管理不全空き家指定の準備中のようです。
危険な状態となる前に、税金を上げて処分を急がせる効果はこれまで以上にあるように思います。
【所有者不明土地対策】
以前は、相続手続きを放置していても何も実損は有りませんでした。
相続が発生したとき、遺言が無い場合は相続人全員で遺産分割協議をして不動産を誰が相続するか決め、所有者の変更登記(=相続登記)をしなければなりません。しかし、相続登記をしなくても罰則もなく、相続登記を促す通知や勧告もありませんでした。売買をするときには、相続登記が完了していないとできないため、売却を考えている場合はするのですが、売却などの予定が無い場合放置されることが多かったのです。
その結果、長期間放置されて、いざ売ろうというときには所有者が多く協議ができない・相続人が認知症になったなどで、登記ができなくなってしまうことがありました。
相続後すぐであれば登記もやりやすいので、これを促すために新しい制度ができました。
<相続登記義務化>
2024年4月より、相続登記が義務化され、相続後3年以内にしないと罰則もある制度です。但し、遺産分割協議がどうしてもまとまらないという場合には、相続人であることだけでも申請できる「相続人申告登記」を新設しました。
<相続土地国庫帰属>
2023年4月より始まった制度です。
これまで、売却・贈与・寄付など手放すには、引き取り手が必要でした。引き取り手のない不動産は、持ち続けるしかなかったのです。
この制度では、相続で取得した土地が一定の要件を満たしていれば、国が有料で引き取ってくれることになります。要件はいろいろありますが、協会が明確でトラブルを抱えておらす、管理に特別の費用が掛かるなどが無ければ、国庫帰属できる可能性があります。
例えば、幅4m以上の道路に2m以上接していないため、再建築が難しい土地で売却が困難な土地でも、境界が明確で更地にすれば引き取ってもらえそうです。固定資産税や管理費用だけが発生する土地であれば、子や孫のために最終処分として検討しても良いと思います。
【まとめ】
また、今後は管理のできていない空き地に罰則を科す制度や、空き家税という新しい課税なども検討されているとのことです。
国の考え方は、
空き家は近所迷惑にならないよう管理しなさい。管理しないと罰則。
相続不動産は、3年以内に相続登記をしないと罰則。
その代わり、管理しやすい更地にしたら、国で引き取ってあげてもいいよ。
ということですね。
不動産の相続でお悩みの方は、弊所にご相談ください。